うらばなし #02

導かれし者たち その1

 平成18年6月にまったくのゼロからスタートしたわが劇団。旗揚げからさまざまな困難と直面してきたが、絶妙なタイミングで、まさに適材適所といった感じで仲間たちが集ってきた。
 ほとんど奇跡に近いものがあるのだが、それはきっと、劇団創立者である衿団長の熱い思いが呼び寄せたのだろう。

 まず、衿団長が最初に団員を募ったのが自分の職場。当然のことである。
 数名の同僚たちが仲間となってくれたが、役者経験のある者は誰一人いなかった。だが、なぜだか粒ぞろい。みんな初めてにしては演技が上手く、とくに旗揚げ公演で主役を務めた団員は、本当に演劇未経験なのかと思うほど素晴らしかったのだ。

 また、後に衿団長の意思を継いで二代目代表となるふ〜みんは、家が木工所で仕事もそれに関係している。つまり大道具制作はお手の物なのだ。
 旗揚げ公演はバーが舞台の物語だったのだが、必要となるテーブルやバーカウンターなどを見事に制作し、その後も毎回、すばらしい大道具を作っている。

 旗揚げ公演までそれほど時間がない中、役の一人をお願いしていた人が辞めてしまった。役の年齢・性別からして代わりをできる団員がおらず大ピンチであったが、人の紹介で入ってきてくれたのがSさん。長い演劇経験を持ち、現在でも夢波の役者陣に欠かせない存在となっている。

 脚本の修正などもしてどうにか役者はそろったが、それでも人数はぎりぎり。裏方が一人足りず、舞台監督が照明も兼ねようと考えていたところ、舞台稽古のちょうど一週間前に稽古を見学しに来たのが前ちゃん。
 たまたま団員募集の広告を目にしてのことであるから、このタイミングはまさに奇跡的。その日に入団を決め、一週間後の舞台稽古では早速照明の機械を操作していた。

 そして、前ちゃんが入団したことはもう一つの奇跡も生んだ。
 先述の通り、旗揚げ公演はバーが舞台の物語。当然のことながらたくさんのお酒やバー用品が必要となるわけだが、お酒のボトルは焼酎の空き瓶などを用意してしのごうとしていた。
 だが、偶然にも前ちゃんの趣味というのがカクテル作り。家には洋酒のボトルが30本以上あり、シェーカーやミキシンググラスなどのバー用品は一通りそろっていたのだ。
 それまではバーにしてはいまいち野暮ったかったものが、舞台稽古にしていきなり本物のバーっぽくなった。

 また、前ちゃんよりも早く入団していたフクちゃんの存在も忘れてはならない。
 バーにはお酒のほかにフルーツが欠かすことができないわけだが、フクちゃんは八百屋。買わずともフレッシュなフルーツが用意できてしまうのだ。
 第三回公演「夢の鉱脈」でもフルーツが登場するシーンがあり、そのときにもフクちゃんのおかげで大いに助かった。

                      
                 ふーみんの大道具、前ちゃんの酒、フクちゃんの果物……奇跡が重なった

 そしてもう一つフクちゃんが入団してくれて助かっているのが、その顔の広さ。仕事柄、下田市内のたくさんの店と付き合いがあり、毎公演、ポスターの配布に絶大な力を発揮してくれている。
 フクちゃんがいなければ、うちの劇団の観客数がもっと少ないことはたしかなのだ。

 第二回公演以後も奇跡は続いていくが、それは「うらばなし #03 導かれし者たち その2」で。

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