うらばなし #06

「夢の鉱脈」が一人二役のわけ

 初のオリジナル脚本で上演した第三回公演「夢の鉱脈」。
 この舞台では、前ちゃんが、田尻産業社員・文野礼司と観光ガイド兼船長・ルカを一人二役で演じている。前ちゃんは脚本と演出も担当しているので、”四足のわらじ”を履いた状態となったのだが、なぜこんなことになっているのか?

 そもそも礼司とルカはそれぞれ別の役者が演じるはずだったのだが、ルカ役を予定していた役者が舞台に出られなくなってしまったのだ。稽古もだいぶ進んでおり、今さら別の脚本を用意するわけにもいかない。

 そこで脚本を執筆した前ちゃんが、この大ピンチを乗り越えるために導き出した答えが、一人二役。ほかの登場人物では無理であるが、自分が演じる礼司とルカであれば、どうにか脚本を修正して同時に二人が登場しないことにできることに気づき、台本を大幅に修正。礼司が登場するときにはルカが出ず、ルカが出るときには礼司が出ず、さらにルカは途中で退場するという形にした。

 この一人二役で運が良かったのは、まず脚本・演出自身が演じるということ。他の役者に一人二役をお願いするとなると自分も心苦しいし、相手にかなりの負担をかけることになってしまうが、自分でやるならばさほど問題はない(台詞覚えるのが一番早い役者なのだ)。
 そして、片方が外国人の役であるということ。サングラスをかけ、片言のしゃべりであれば、経験の低い役者とはいえ、どうにか二役をこなすことができる。(もっとも、観客の中には物語途中まで、礼司がルカに変装していると勘違いされた方もいたのだが……やはり演技が未熟だったか)

           
                  文野礼司                      ルカ

 「夢の鉱脈」はコメディタッチの作品であるが、災い転じて福となすというべきか、両者の登場や退場シーンをコメディ部分にすることとなり、笑いの箇所がより増えたのだった。
 それにしても、これがオリジナル脚本でなかったらどうなっていただろうか。部外者の書いた脚本ではここまで大幅な修正をするわけにはいかないし……、考えてみるとゾッとするような大ピンチであった。

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