うらばなし #08

稽古の様子 その2

 夢波の場合、公演の約一ヶ月ほど前に舞台稽古を行う。舞台稽古とは、実際に公演を行う場所を使っての稽古である。

 舞台稽古はたった一度。つまり、本番とまったく同じ環境で稽古を行えるのは一度きりなのだ。
 二度、三度、舞台稽古ができればそれに越したことはないけれど、会場の予約を取るのも大変だし、使用料がかかってしまうという現実的な問題もある。

 舞台稽古はさまざまな点で非常に重要だ。とくに次の三つ。

 まず第一に、雰囲気。
 漠然としたものではあるかもしれないが、役者にとって雰囲気ほど大事なものはないのではないだろうか? 本番で緊張するのって、結局のところ雰囲気に圧されてしまうからだろう。
 緊張する一番の原因である”観客”ばかりは稽古の時には用意しようがないが、舞台上からの観客席の見え方、会場の広さ、照明の作り出す雰囲気、音響の感じなど、ふだん稽古を行っている公民館や体育館とはまるで違う本番の雰囲気を味わうことはとても大事なことだ。
 旗揚げ公演の舞台稽古では、全員が本番会場に立つのが初めてであり、とくに芝居が初めての役者たちは、舞台と観客席の近さに驚き、「え、こんなに近いの?」「無理ー!無理ー!」と騒いでいた。

 第二に、実際の広さ・距離が確認できること。
 これは先述の雰囲気とは違い、物理的な意味で広さが確認できるということ。役者の動きはもちろんのこと、大道具の配置(ここからここまで何センチ、といったように正確に測っておく)もこの舞台稽古のときにちゃんと決めておかないと、本番当日になって慌ててしまうことになる。

                    
                    第四回公演の舞台稽古(空き時間中だけど)

 第三に、照明・音響の使用。
 役者以上に舞台稽古が重要となってくるのが照明と音響の担当。なにしろ、本番前に実際の機械を操作することができるのはこの機会しかないのだから。
 とくに、音響についてはまだパソコンやCDラジカセを使って、ふだんの稽古でも実際の音楽を流すことができるが、照明ばかりはこの一日しか使いようがない。色を細かく決めるのも、この舞台稽古で行わなければならない。

 舞台稽古を通じて、新たな課題を見つけることも多い。「ここはこうするつもりだったけど、実際はこうなるから出来ないなあ」といった具合に。
 しておくべき失敗は、舞台稽古でやっておかなければならないのだ。

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