うらばなし #11

二人の千也

 第四回公演「怪談日和の雨の日に〜冬桜狂咲〜」では、特徴ある公演方法を行った。三名の登場人物のうち一名をダブルキャストとして二回公演を行ったのである。

 ダブルキャストで演じたのは、旅芸人の千也。

 一回目の公演では、これが初舞台となるゆっきーなが、二回目の公演では三度目の舞台となる前ちゃんがそれぞれ千也を演じた。
 ゆっきーなは芝居が初めてということで、稽古では基本的に、まずは前ちゃんが先にやってから、それを参考にゆっきーなが続いて同じ場面をやるということが多かった。「見本」を見てから稽古ができるというメリットはあったかもしれないが、実際に自分がやる時間が他の役者の半分になってしまうという点で、むしろ初めて役者をやるのに大変ではなかったかと思う。

 二人の千也は異なる点が二つあった。

 まず一つは、年齢。
 二人はちょうど10歳ちがい。脚本上、千也はだいぶ若い(たぶん十代後半)と考えられ、実際の年齢がそれに近いゆっきーな版千也の方が、作者がイメージしていたものに近かったと思われる。

 もう一つは、背丈。
 背が低めのゆっきーなと高身長の前ちゃん。千也は舞を踊ったり殺陣を演じるシーンがあるため、この体格のちがいは観客に与えるイメージに多少の影響を与えたことと思う。
 とくに舞に関しては、それを意識したわけでもないのだが結果的に、ゆっきーな版千也はわりと動きの小さい可愛らしい感じの舞を、一方の前ちゃんは高い背と長い手を生かした舞となった。使用した音楽もだいぶちがう曲調のものだったので、この舞のシーンに関しては、それぞれの観客へのイメージのちがいは大きかったはずだ。

       
            ゆっきーな版千也の舞                 前ちゃん版千也の舞

 さて、舞の振り付けは、ゆっきーな版千也については、少し日舞の経験がある演出の指導で動きをつくった。
 一方の前ちゃんは、舞踊の経験などこれっぽっちもないが、自分の舞は自分で決めると言って、音楽も自分で選び動きも自分でつけた。で、舞踊の経験がないのにどうやって動きを考えたかというと、実は前ちゃん版千也の舞の動きは、歴代ウルトラマンの変身ポーズをアレンジしてつなぎ合わせたものなのだ。

                             うらばなしのトップに戻る