うらばなし #30

「天国へのパスポート」の名前の秘密

 団員の前ちゃんが脚本を執筆した第六回公演『天国へのパスポート』は、同じく前ちゃん脚本の第三回公演『夢の鉱脈』、第五回公演『夢の化石』と同様、登場人物の名前には意味が隠されている。

 まず、本作の登場人物の名前は以下のとおり。

  夜船 沙織 …… 夜船家の末子
  夜船 陸   …… 夜船家の次男。半年前に死亡したが生き返る
  夜船 玲也 …… 夜船家の長男
  夜船 優子 …… 沙織たちの母
  黄木 志朗 …… (有)ゼロ・カンパニーの営業担当
  泉谷 姫花 …… (有)ゼロ・カンパニーの霊能力者
  天野 国男 …… 町内会長
  キャサリン …… 天使

 本作は死者が生き返ったことに起因する騒動を描いたコメディであり、登場人物たちの名前には天国や幽霊に関係するネーミングが隠されている。

 まず、キャサリンであるが、これだけは何の意味も隠されておらず、劇中で本人が「だって可愛いじゃないですかぁ。天使っぽくないですか?」と言っているとおり、イメージだけで付けられた名前である。

 もっとも意味がわかりやすいのは、町内会長の天野国男。姓と名の頭文字を合わせると「天国」となる。これはおそらく、観劇に来ていただいた方たちの中にも気づかれた方が少なくなかったのではないかと思う。

 次に、(有)ゼロ・カンパニーの黄木と泉谷であるが、それぞれの頭文字を合わせると「黄泉(よみ)」。
 さらに、会社の名前にも意味がある。劇中では「ゼロ・カンパニー」とだけ名前が出て、有限会社であることは触れられていないのだが、”有”と”ゼロ”を合わせると、”ゆう”+”零(れい)”。すなわち「ゆうれい」となっている。

                     
               
     キャサリン以外の登場人物の名前にはそれぞれ意味が

 そして夜船家の面々。
 この物語ではぼたもちが重要なものとなっているが、ぼたもちは季節によって名前が変わる。主にお彼岸のときに食べるものであり、春の”牡丹餅”、秋の”お萩”はよく知られているところである。
 そしてあまり知られていないが、冬に作ると”北窓”、そして本作の設定である夏に作った場合には”夜船”と呼ばれるのである。なお、夜船というのは珍しいが実在する苗字である。

 夜船家の母・優子と長兄・玲也の頭文字を合わせると、”優(ゆう)”+”玲(れい)”で、こちらもまた「ゆうれい」となっている。

 そして最後に、物語のメインである沙織と陸。これが一番難しいというか気づきにくいのであるが、”さおり”と”りく”を合わせて”さおりく”→「ザオリク」となっている。
 知らない方のために説明すると、ザオリクとは大人気RPG「ドラゴンクエスト」シリーズに登場する、死者を生き返らせる呪文である。

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