うらばなし #31

巨大精霊馬の秘密

 第六回公演『天国へのパスポート』はこれまでに上演したコメディ作品の中でももっとも多くの笑いを取った作品である。その中でも観客が一番笑ったのが死者が蘇って「巨大精霊馬(しょうりょううま)」に乗って登場するシーンであった。

 そもそも『天国へのパスポート』は、脚本を書いた前ちゃんが、「お盆のときに飾るキュウリやナスって御先祖様が乗るためだけれど、本当に魂がそれに乗っていたら面白いよなぁ」と思ったのがきっかけとなって書いた物語である。結果的には家族愛や生きることがテーマだと受けてとれる作品となったが、脚本家としては一番大事な場面はここであった。

 この巨大精霊馬、出てこなくても物語にはまったく影響しない。あくまで笑いを取るためだけにある。
 しかし、この場面を思いついて書き始めた物語である以上、これは絶対に出さなければいけない。というか、脚本家がこの場面を観たかったという、もはやわがままである。

 巨大精霊馬は人が乗って動くものであるため、強度、軽量性、可動性が要求され、大道具担当のふ〜みんが非常に苦労した製作品となった。ふ〜みん曰く、前年の『夢の化石』で製作したイズミダーよりも間違いなく難易度が高いとのこと。脚本を書く方は思いついたことを書くから楽だが、作る方はたまったものではなかったのだ。
 製作の苦労話はふ〜みんがブログ(2012.2.12&20)にてくわしく書いているので、ぜひ一読していただきたい。

                     
               
       巨大精霊馬の登場シーンは観客が大爆笑だった

 さて、巨大精霊馬は底部についたキャスターで動いている。登場のときには幕袖でMさんが押し、帰るときには底につけてあるテグスをやはりMさんが引っ張って動かしていた。
 とくに登場のときは止まる位置が重要となるが、これはMさんの力加減次第。ある程度は乗っている夜船陸役の前ちゃんが客席から見えない左足でブレーキをかけて調節しているが、ほぼMさんにかかっていた。結果、とくに二日間の公演のうち一日目は百点満点のベストポジションで止まることができた。

 なお、御来場いただいた方のアンケートで、「キュウリ(馬)で早く来て、ナス(牛)でゆっくり帰る」ことを指摘されたりもしたが、そんなこと知ってるっつーの!!
 
 キュウリの巨大精霊馬は以下の理由により製作は絶対に不可能なのである。

(1)その形からキュウリは腹の部分を接地させることができず、キャスターが付けられない。
(2)仮に何とか(1)がクリアできても、登場までに隠しておく幕袖が2mもないため、長さがせいぜい1.2
  mくらいにしかできない。そうすると胴がその分細くなるので人の重量に耐えられない。
(3)どうにか(2)もクリアできたとして、そうすると足もサイズに合わせて短くなるので、車高(?)が低く
  なりすぎ、乗るのが大変である上に観客席から見づらくなる。
(4)キュウリも作れと言ったら、大道具のふ〜みんがキレる。

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